脊椎外科とは

脊椎外科のイメージ写真

脊椎とは、一般的には背骨と呼ばれている部分になります。なお脊椎は32~34個の椎骨で構成されているわけですが、上から7個までの椎骨を頸椎、その下の12個が胸椎、さらに下の5個が腰椎、そのまた下の5個が仙椎、一番下の3~5個ほどあるとされる尾椎から成っています。これらが集まった状態が脊柱で、その中に脊柱管があるのですが、この管の中を脊髄が通っています。脊髄には、脳から発せられる指令を伝える神経、感覚の情報を脳へと返す神経、心臓や消化器などの運動を調節する神経など、様々な神経が走っております。この脊椎で起きた異常や疾患を診療していくのが脊椎外科になります。

このように脊椎は体を支える重要な部分でもあり、その影響は人体の広範囲に及ぶことから、これらの部位で何らかの障害が起きるようになると様々な症状がみられるようになります。また脊椎疾患は、治療が長期に及ぶのが特徴で慢性的な疼痛に悩まされている患者様も少なくありません。なお手術療法による治療が必要となった場合は、週1程度の頻度になりますが、当院長が戸塚共立第2病院にて手術対応することも可能です。

脊椎外科で扱う主な疾患

  • 椎間板ヘルニア(頸椎・腰椎)
  • 腰部脊柱管狭窄症
  • 腰椎分離症・分離すべり症
  • 頸椎症(脊髄症、神経根症)
  • 後縦靭帯骨化症
  • 黄色靭帯骨化症
  • 椎圧迫骨折 など

椎間板ヘルニアとは

椎間板とは、椎骨同士の間をつなぐとされる、円形の軟骨組織になります。骨と骨をつなぐ働きのほかにもクッション的な役割もあります。この椎間板が、加齢(老化)による変性、衝撃(外傷)などをきっかけにして、髄核が飛び出してしまうことで椎間板が変性、それによって脊髄や神経根が圧迫されてしまい、それによる痛みやしびれ、感覚・運動障害が出ている状態が椎間板ヘルニアです。この場合、発生した椎骨の場所によって診断名は変わりますが、その大半は人体の構造的に負担がかかりやすい頸椎(頸椎椎間板ヘルニア)と腰椎(腰椎椎間板ヘルニア)です。

頸椎椎間板ヘルニアでは30~50歳代の方に発症しやすく、主に頸部や肩に痛みやこりがみられます。なお脊髄や神経根が圧迫されている場合、神経根症では左右どちらかの上肢に疼痛や運動障害などが、脊髄症では手足に痙性麻痺がみらるようになります。腰椎椎間板ヘルニアでは、腰椎の下位に腰痛や左右どちらかの足に疼痛や感覚障害や運動障害がみられるようになります。脊髄が障害を受けると痙性麻痺、馬尾神経が障害されると膀胱直腸障害、神経根が障害を受けるとおしりの片側や下肢に疼痛が現れるようになります。発症は20~40歳代の方によく見受けられます。

腰部脊柱管狭窄症とは

主に加齢による腰椎の変性が原因とされ、それによって脊柱管が狭窄し、様々な症状が現れている状態を腰部脊柱管狭窄症と言います。50歳以上の方が発症するとされ、一口に脊柱管の狭窄と言いましても馬尾神経が圧迫されている場合と神経根が圧迫されている場合で症状が異なります。

馬尾神経では、両方の下肢や会陰部にしびれや灼熱感などがみられ、膀胱直腸障害が起きるようになります。また神経根の場合は、お尻の片側や下肢で疼痛がみられるようになります。どちらのタイプであったとしても最も特徴的なのは、間欠跛行です。これは、長時間歩行すると足の痛みやしびれで歩けなくなるのですが、少し休むとまた歩けるようになります。これを繰り返している状態を言います。

なお、比較的若い世代の方でも重労働や重いものを持つなどの職業で腰部などを酷使、何かしらの原因で腰を痛めたということで発症することもあります。

頚椎症とは

頸椎の椎間板が主に加齢によって変性、あるいは長年に渡って続く首の酷使などが原因で起きるとされる疾患です。上記のような原因で椎間板が変形することで発症します。脊髄が圧迫されていると頚椎症性脊髄症、神経根が圧迫されると頚椎症性神経根症と診断されます。

よく見受けられる症状は首の痛みやこりといった頚部痛や頚部の可動域の制限といったものですが、頚椎症性脊髄症になると手足の痙性麻痺がみられるほか、排尿・排便の異常(膀胱直腸障害)がみられることもあります。また頚椎症性神経根症では、圧迫を受けている神経根に一致する手(上肢)に疼痛が見受けられるようになります。多くは保存療法(薬物療法、装具療法)による治療で軽快するようになりますが、日常生活に支障をきたすほど重症な場合は手術療法となります。